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ピストンリング博物館

機能を満たす技術

C-3 ガスシール性(3)フラッタリングと姿勢制御

「フローティング」とは「ふわふわ浮く」という意味ですが、 エンジンの場合は、ピストンの溝の中で、ピストンリングが持ち上がってしまう、不安定な姿勢にフラフラしてしまう、ことを指します。ひらひら飛ぶ、の意味でフラッタリング(fluttering)と呼ばれることもあります。このような状態を防止するための姿勢制御技術が気密性保持に欠かせません。

ガスシール性(3)フラッタリングと姿勢制御

左図を見てください。
このような状態(フローティング・フラッタリング)になれば、ピストンリングが溝の中で持ちあがり、燃焼ガスが後ろを通って下に漏れてしまいます。

これを防止するための方法がいくつかありますが、ここでは合い口隙間(あいくちすきま)の設計技術を紹介します。

下図でS1寸法が合い口隙間を指します。

合い口隙間

合い口隙間は限りなくゼロに近づけますが、真円に閉じた時に、わずかは残ります。低温時と高温時ではシリンダーとピストンリングには温度差が生じます。また熱膨張率の差もあります。これらを考慮して、突き当たらない設計※1をしているのです。

運転時の合い口隙間(通常は0.3mm程度とわずかです)から微妙に漏れるガス圧が、フローティングに影響します。トップリングの合い口隙間と、セカンドリングの合い口隙間との微妙なバランス設計をすることで、フローティングが抑制されてガス漏れ(ブローバイ)を最小にすることができます。しかも、オイル消費も低減されるのです。

こうして、運転中のピストンリング姿勢を正しく保つ工夫がされています。

  • ※1 自由状態でのピストンリングが仮想線(点線)で示してあります。
    シリンダーに装着しないときは、m寸法の分、合い口は開いているのです。
    これを自由合い口隙間と呼びます。